第18章 ムカツク【蜂楽視点】 ✢
「冗談でしょ?」
パンッ!て乾いた音が響いて、ほっぺに衝撃が走る。
夢ちゃんにビンタされたその瞬間、痛いってのよりも驚きが勝ってて。
なんだか体が宙に投げ出されたカンジで……
全然痛みを感じなかった。
「……ムカツク。本物の彼氏じゃ、ないくせに。」
夢ちゃんは小さく言って、ひとりで生徒会室を出た。
開けっ放しの引き戸から人が行き来する姿が見えて、急激に現実に引き戻される。
「あれ?君、ここで何してんの?」
誰だか知らんけど、ひとり部屋に入ってきて、
腕に付けてた生徒会の腕章で、夢ちゃんが言ってた、次に休憩の人なんだって判った。
「ごめん。迷子になった。」
迷子になったのは、さっきの俺の心。
ほっぺの痛みが、時間差で来た。
「……痛った。」
夢ちゃん、どうしよう。
俺、夢ちゃんのコト……
病的に、狂愛(あい)してる───。