第11章 ビター ✢
「みんなでなら楽しくて、いーっぱい食べれるよ♪」
“苦しいことも悲しいことも、
一緒に乗り越えられたらもっと嬉しい。”
熱で休んだ日だって、こう言ってくれた。
「……じゃあ、行こっかな。」
優しい言葉で、少しずつ心が整ってくる。
「……廻。ハグ、して?」
「素直なかわい子ちゃんだコト♡」
この胸の中にいれば“だいじょーぶ”って思えるのに。
「チューは?」
「ちょーだい……?」
「あーい、ただ今♡」
そろそろ話した方がいいのかな?
キスで眼を閉じた時、瞬間的に考えた。
「食べれるもの食べるんだよ!また明日の昼休みね、バイバイ♪」
「ありがと……バイバイ。」
蜂楽……蝉川のこと、大丈夫かな。
───蝉川、か。
…………
……待って、もしかして。
私を尾けてたのって、まさか……
蝉川───?
仮にそうだとしたら……
合宿中、蜂楽がまた嫌がらせされる可能性は高い。
いつもより長い時間を共にするんだから……
今までよりもっとエスカレートするかもしれない。
あの人、私と蜂楽が付き合ってるって真に受けて
それを面白がって、こんなことしてるんだ。
蜂楽のサッカーが気に食わない、だけじゃなく。
───私のせいだ……。
蜂楽に“恋人役”なんて頼んだ、私のせいだ……。
なんでもっと早く気付かなかった?
蜂楽といるのが新鮮で、あまりに楽しくて……
こんな単純なことにも気付けなかった。
蜂楽をこれ以上、巻き込んじゃダメだ。
蜂楽を……もう傷付けたくない───。