第5章 適性試験
「へぇ〜ちゃん妹いたんだ。意外」
あっさり受け入れたのは蜂楽だった。
ひょいっとリゼを抱き上げた。
リゼもぱちくりと驚きはしたものの泣くことはなかった。
この妙な肝のすわり具合が姉とおぼしき女に通じるものがある。
「リゼちゃんもお医者さん?」
「お医者さんのおてつだいと、なにかあったらねえさまにおでんわ」
「えらいね〜」
蜂楽がくるくるとリゼを回すと、リゼもどことなく嬉しそうな表情を見せた。
「すげー蜂楽」
「お前はやらんのか乙夜」
「ガチもんのお嬢様相手だから人前じゃムリ」
乙夜はリゼの複雑すぎる出自を知っている。
とっくに故人なのに大人の事情で死亡届が出されていないの実母、乙夜もうっすらと覚えている女性の娘ということになっていること。
ごく最近になって、が18歳になったのを機にの養子になり現状は継国の後継ぎであること。
の妹だろうが娘だろうが、間違いなくこの世に3人しかいない継国の血族であるため、傷一つつけるわけにはいかないこと。
そして肝心の血族である3人がけろっとしているくせに、血の一滴でも他者の手に渡るのを赦さないから始末に負えない。
「……なあ乙夜、リゼって先輩の」
「その通りだけど言うのはアウトよ、玲王」
わなわなと震えながらリゼを指差す玲王に、乙夜は被せるように牽制した。
さすがに家同士で繋がりのある者達はリゼを知っているらしい。
だが日本屈指の大富豪である御影の御曹司ですら、存在は知っていても詳しくは知らないのは、継国の秘密主義が関係している。
継国というより、継国を取り巻く中で無闇に漏らすまいと思っている者たちによる隠蔽だ。
彼らの心配とは裏腹に、男だらけのむさ苦しい空間に現れた女の子と犬という癒し系にはホワ…と心が穏やかになったらしい。