第4章 七海健人 覚悟
七海side
『‥ん‥』
窓から心地の良い朝陽が差し込んできて
隣で小さく丸まっていたさんが伸びをする
忙しなく残酷な日常からは想像も出来ないほど
幸せな世界がそこにはあった
「このまま2人でどこか遠いところまで行ってしまいましょうか」
柔らかな髪を優しく撫でると閉じられていた瞼がゆっくりと開かれた
『七海くん‥?』
「おはようございます‥気分はどうですか?」
にこりと微笑むと寝起きの可愛らしい顔が少し赤く染まる
『うん‥すっかり‥七海くんは‥その‥身体大丈夫?』
「大丈夫ではないと言ったら‥もう一度抱かせてくれますか?」
『っ!』
りんごみたいに真っ赤になる顔
ころころと変わる表情が可愛くてついふっと吹き出してしまう
「ふっ‥冗談ですよ‥あれは媚薬のせいで仕方の無い事でしたから」
そう自分に言い聞かせるようにして笑ってみたけれど
脳裏に蘇るのは
昨夜の
愛おしそうに私を求める表情
声
何度も求めあった深い口付け
つい
さんと自分が同じ想いなんじゃないかと勘違いしてしまいそうだった
『だ‥だいじょうぶでも‥』
「?どうされました」
白い肌が恥ずかしそうにさらに赤らむ
『大丈夫でもっ‥抱いて‥欲しい‥‥』
「‥え?」
耳を疑う言葉
ベッドの脇に置いていた眼鏡に慌てて手を伸ばして
さんの顔をまじまじと見ると冗談で言っているのではないと一目で分かる
『あの時は‥仕方の無いことだったのかもしれないけど‥』
たどたどしく話す言葉を呆然と聞き入る
今からさんが言おうとしてくれているであろう言葉が
現実とは思えないからだ
『気付いたの‥‥七海くんの事が好きだって‥また‥2人でこうしたいって‥おもったの‥‥』
そこまで言うと白いシーツをガバッと頭から被って隠れてしまった
「あぁ‥それは反則です‥」
さんがシーツに隠れてくれて良かった
きっと今の自分は
誰にも見せられないほど緩んだ顔をしているだろうから
「そのままでいいので‥聞いてくれますか?」