第6章 乙骨憂太 君の全てに嫉妬する
『あのっ‥どこに行くんですか‥?報告書は‥?』
昨日の報告書の件について聞きたいと言われて教室をでてから
職員室の前を通り過ぎてどんどんと歩くスピードが速くなるから小走りでついていく
「すいません!車の中に報告書置いてきちゃって!」
『そうだったんですね!いつもありがとうございます!』
車の中に報告書を忘れてきてしまったと言う補助監督さんの車は駐車場より随分と離れたところに止めてあって少し息が上がってきてしまう
「すぐ探すんで助手席に座っててもらえます?」
『はいっ!では‥お邪魔します』
運転席に乗り込んだ補助監督さんの隣
助手席に座らせてもらうとガタンと音を立ててシートが倒される
『わぁっ?!』
「すぐ帰らないと怪しまれるんで‥強引ですみません」
突然の事に何が起こったか理解が出来なくて
気付けば押し倒されたシートの上
覆い被さる様にして補助監督さんの顔が近付いてくる
咄嗟に顔を逸らそうとすると窓をドンドンと叩く音が聞こえてきた
「ちゃんっ‥」
『乙骨くんっ?!』
ミラーにうつるのは怒りに目が据わった乙骨くんの顔だった
「今すぐに開けてください」
「ひっ‥」
今まで聞いたこともないような低い声でそう言うと補助監督さんが慌ててドアの鍵を開けてそのまま逃げて行ってしまった
「はぁ‥‥よかった‥‥」
開いたドアから乗り込んできた乙骨くんが
私の身体を引き寄せて抱き締める
力強く逞しい腕
安心する腕の中
大きな背中にそっと手を回すと
なんだか涙が溢れてきてしまう
白い制服にぽつぽつと涙のあとが滲んで
それに気付いた乙骨くんの顔が近付いてくる
「キス‥してもいい?」
優しい声色にこくりと頷くとゆっくりと唇が重なり合った
少し離れては
また近付いて
柔らかな唇の感触と温かさ
初めて感じる気持ちよさにここが学校の敷地内ということも忘れてしまいそうになる
「草食動物かと思ってたが‥憂太も案外肉食動物だな」
『っ?!』
繰り返されるキスに夢中になっていて
窓にぺたりとくっついていたパンダくんに気付かなかった