第10章 黒猫ととある部活の1日
「はーい!はい!俺!俺やります!!」
「何故かやる気満々だね、リエーフは。」
「自信あるんで!研磨さんもやりましょうよ!」
ふんすふんすと鼻を鳴らすリエーフ。正直、やる前からなんとなくわかる。コイツに壁ドンなんてされたら、トキメク以前に単純に怖い。デカ過ぎて。
…なんて事をポケーっと考えてたら不意にリエーフの長い腕が私の手首を掴み思いっきり引き寄せられた。
「うぉあ!」
そのまま身体…というか背中は体育館の壁へとぴったり当たる。リエーフは片腕を私の頭よりずっと高い位置で壁に押し付け、緩く肘を曲げて覗き込む。やっぱデカイな。
「さん!エースになったら俺と付き合って下さい!」
「え、それはちょっと…。」
「えー!?なんでっスか!はッ…………エースになるまで待てない…とか?」
「いやむしろリエーフがエースになる頃には私卒業してるよ。」
「!!」
ガーン、と効果音が付きそうな位ショックを受けた表情。やっぱりリエーフはときめくと言うより、見下ろす巨体が怖いな。でもこれって身長差があるからこその壁ドンな気はする。
「45点。」
「しかも低い!」
「ぶっひゃひゃひゃ!ざまぁ!!」
「こ…これから上がるんですよ!」
「上がらないんじゃねーかな?」
「夜久さんひどい!」
「次研磨な、研磨!!」
「えぇ…おれはいいよ、クロがやりなよ。」
「イイから、ほらッ。」
「うわっ。」
背中を押された研磨はその勢いのまま、トン、と私の顔の両脇に腕を付いた。急に接近した距離。目と鼻の先とは正にこの事では。こうして立ってみると研磨意外と背が高いんだよね。少なくとも夜久ちゃんより。
「あー……ごめん?」
研磨は白い肌をちょっとだけ赤くして視線はあちこちへと逡巡させた。可愛い、天使かな。私は戸惑う研磨の背に腕を回し、グッと引き寄せた。
「壁グイ!」
「「「!!??」」」
「なんスかそれ俺にはなかった!」
「あー…流石にちょっと羨ましい…。」
「………ヘぇ〜?」
「ちょっと…!、離れて。」
わかりやすく慌てる研磨が女の子みたいに可愛くて可愛いくて、ちょっとだけ力込めてしっかり抱き締めてから離れた。弟に研磨が居たら私は毎日ちょっかい掛けてたと思う。