第8章 黒猫、赤く染まる
腹を抱えてケラケラ笑う夜久ちゃん。そんなの私の方が聞きたいわ。実はクロ女なんじゃないの。
結局女の子らしさというものを挫折した私はぶすくれたままお誕生日席に戻った。男共が1人ずつ入れ替わり立ち代わり風呂入っている時間、残りの奴らとただ駄べるという、凄くまったりとした時間が過ぎていく。今は木兎が最後のお風呂。まぁお互い明日、部活休みだしね。
「赤葦くんはさー、どんな女の子が好きなの?」
「え、俺ですか…?」
「赤葦はバレー一筋ですー、とかじゃねーの?」
「あー見える。どうなんだ?」
「俺も高2なんだから、興味位ありますよ。」
「マジで!?意外だわー。」
「ど…どんな女の子が…?」
ドキドキしながら再び聞き返すと、目が合った赤葦くんは一瞬だけ、ふと口元に笑みを浮かべて直ぐに逸らされてしまった。な、なにそれ気になるじゃん。
「…優しい人、ですかね。」
「ふーん典型的ー。」
「それ私では?」
「ポジティブかよ。もっと具体的なのねーの?」
「そう言う夜久さんはどうなんですか?黒尾さんは置いといて。」
「赤葦ちょっとは俺にも興味持っていいんだぜ?」
「聞かなくても、さんでしょう。」
「それは否定しねーけど。」
「本人目の前にいっそ清々しくない?この男。」
「今更隠しても仕方ないデショ?で、夜久は?」
「俺より背が低くてショートカットの子!守ってあげたくなるだろ?」
ふふんと鼻を鳴らす夜久ちゃん。うん、可愛いな。男らしい事言ってはいるんだけど可愛いな。ごめんね夜久ちゃん。
脱衣場の扉が開く音がして、木兎が戻ってきた。濡れた髪が垂れ落ちててなんか邪魔そうだけどこれはこれで似合うと思うんだよね。
「ちゃんと髪拭きなよ木兎、風引くよ。」
「拭いてー。」
「自分でやれ。」
「ちえ。」
私より木兎の方がもしかしたら甘え上手かもしれない。これが末っ子体質ってやつか。椅子に戻った木兎は首に掛けてたタオルでガシガシと頭を拭く。
「何の話してたんだー?お前ら。」
「好みの女の子について?」
「すげー男子高校生らしい話してるけど女の子だよな?」
「え、うん、ダメ?」
…確かにさも当然のように混じってしまったけど多分女の子が混じる会話では無かったかもしれない。いやでも女子でも気になるもんじゃない?