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鬼が人の心を宿す時【鬼滅の刃】*短編集(ほぼ鬼)

第2章 The Light in the Abyssー前編【猗窩座】



控室。

周りのスタッフは、慌ただしく猗窩座様を迎える支度にとりかかっている。

手元、デザインのデッサンとマネキンで試した写真を見比べる。
ボディーペイントなんて久しぶりだ。

某装飾ブランドの広告用の撮影に彼の腕と上半身にペイントするというものだ。

なぜかわたしを指名してきた彼は、今まで必要最低限の会話しかしてきていない。

普段、先輩からよく注意される。

「もっとタレントの気分をあげれるように沢山お話しなくちゃ…。私たちの仕事はタレントにただ化粧をするだけじゃないのよ」

と。

正直、わたしは、コミュ障拗らせた職人気質な人間だ。

そんな煩わしい事が嫌だったのに、企業側の意図するものを拾って、メイクを施していく人間を引き立てる演出ができるからとかで、この部署から抜けられないでいる。

いい迷惑だ。

ただ、今担当になってる彼は本当にわたしにとって都合のいい人だ。

無口無表情でも誰も文句ひとつ吐いてこないから。

むしろ、初めて彼の担当になったキッカケは先輩からの押し付けだった。

「猗窩座さん、ちょっと気難しくて無理…。話したらギロッて睨まれたことあって…」

最初はいい迷惑だって思ってたけど、わたしにはすごく居心地が良かったから結果オーライだ。

「猗窩座さん、入ります」
「はい」

空気がぴりつく。

「おはようございます」
「おはようございます」

振り返れば、ドアから歩いてこちらに向かう猗窩座さん。
彼に施す最初の仕事はわたしだ。

一度、視線がこちらを見て少しだけ表情の温度が上がった気がする。

衝立の奥にバスローブに着替えるために入った。

その後はわたしと彼だけの二人の静寂の時間となる
















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