第1章 禍根【江戸後期:鬼舞辻無惨】
元号は大正となる。
あれ以来、記憶を弄ろうと、体を変容させても
岩松紗枝の記憶は鮮烈に焼き付いたまま離れてはくれなかった。
あのあと一人だけ妻を娶るも、形だけというテイから外れることはなく心を乱す存在にはなりえなかった。
竈門炭治郎、竈門禰󠄀豆子という兄妹が私の行く道に立ちふさがり、禰󠄀豆子を取りこむための最終決戦へと戦いは進む。
しかし、負けたのだ。
薄れゆく意識のまま、私は崩壊する。
無間地獄という虚無と闇に包まれて。
ただ、紗枝の冷酷な眼差しと最後の言葉だけが
いつまでも
いつまでも
もうないはずの私の魂までじりじりと焼き尽くしていた。
ー完ー