【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
side 沙良
かれこれ3時間は経っただろうか。家にはとっくに戻ってきていて、課題を終わらせ、本を読んでいるところだった。
スマホが光り、連絡がきたことがわかると、すぐに画面をタップした。
"あ…沙良ちゃん?もう帰った?"
連絡をくれたのは、勿論十亀さんだった。
『はい…結構前に…今は家にいます。
蓬莱さんと…話せましたか?』
"うん…ありがとう、ホントに。
良かったよ、時間作ってもらって。それで…沙良ちゃん、今から行ってもいいかなぁ?顔を見て話したいんだ。"
『…っすみません…父が…心配するので…』
"快人の事は…俺からお父さんに話すよ…
わかってもらえなくてもいいから、とりあえず話したい。
だめかな?"
『…っ……』
確かに蓬莱さんの事は解決したと伝えたいし、私も…早く自由に外に出たかった。
ポトスにも行きたいし、皆にも会いたい。
ーーーーーーーーーー
「こんばんはぁ……」
「いらっしゃい。……?…何かお探しかな。」
若いお客さん。不思議そうに父が話しかけると、十亀さんは深々と頭を下げた。
「沙良ちゃんの事…危険な目に遭わせてしまってすみませんでした…僕の友人が起こした事です。
彼はアメリカに渡りますので…チームも解体しました。
信用できないかもしれませんが、縁あって沙良さんと知り合うことができたので、これからは僕も…
僕のチームも風鈴と一緒に沙良さんを守ります。
必要であれば、しばらく僕が沙良さんを送迎しますので…
沙良さんを自由にしてあげてくれませんか?」
『っ…十亀さんっ…』
「えっ……ちょっとよく…何?」
何が何だかわからない父は、とりあえず茶の間に十亀さんを通し、話を聞いてくれた。
十亀さんは真剣な顔をして、父の質問に一つ一つ真摯に受け答えしてくれた。
「…話はわかった…
やっぱり沙良…あの日悪い連中に絡まれていたのか…」
『ごめんなさい…言えなくて。』
「………」
『お父さん…?』
「危ない場所に越してきちゃったな…って…正直後悔した。
お前を危険な目にあわせて…さきの町にいたらそんな事なかったのかな…って。
…やっぱり戻った方がいいのかな、と考えた事もあるんだ。」
『………』