第10章 4日目
白衣を着た女の子のサツキが、部屋の中に時計を置いてくれたからだいぶ日時の感覚が戻ってきた。どうやらいつも通り、オラは朝の四時に起きたみたいだ。
それに、サツキがカレンダーを手書きで作ってくれたから日付けも分かってきた。オラはこの研究所に来て四日経つらしい。
オラが研究所にいる理由は、オラが他のMOBより長生きだからなんだって。そんなことは知らないけど、今日からオラは色々とジッケンをするみたいだ。だからオラは、サツキが来るまでボールペンを持ち上げたり下ろしたりして体を鍛えることにしていた。
そして、八時になった頃にサツキがやって来た。サツキは手に何かを持っていて、オラにこう話し掛けてきた。
「ねぇ、聞いて、カズ」とサツキは話しを切り出す。「この研究所には珍しい植物も育てていて。少し分けてもらったの」
とサツキが見せてくれたのは赤と黄色の花。サツキは楽しそうに話を続けた。
「トーチフラワーって言うんだって。スニッファーを育てる種を落とすみたいで、研究に必要な花なんだって」
スニッファー?
なんだろう、生き物か何かなのか? とオラはサツキを見上げた。するとサツキがオラの心の中を見抜いたように目を見開いてそっか、と呟く。
「スニッファーって結構珍しいからカズは知らないのかな」とサツキは少し考える素振りを見せた。「今度連れてきてみようかな。実験の一つだって言って」
そうぶつぶつ言いながらオラにウインクをしたサツキ。今までここで会った人間とは少し違うような気がした。まるで、前の飼い主さんみたいな。
そこまで考えて、オラはさんだーのことを思い出した。さんだー、今頃何してるんだろ。また変なMOBに襲われていないといいんだけど。