第16章 闇の印【炎のゴブレット】
フレッドが窓から身を乗り出してから叫んだが、モリーもビルもチャーリーもリーマスも何も言わない。
汽車はどんどん速度を上げて4人から離れていく。
「なんの規則が変わるのぉ?」
モリーはただ微笑んで手を振るだけ。
列車がカーブを曲がる前には、4人とも『姿くらまし』でその場から去ってしまう。
全員結局何も分からず、そのままコンパートメントに戻っていった。
窓を打つ豪雨で外はほとんだ何も見えない状態の中、ピッグウィジョンは『ホーホー』と鳴いている。
「相変わらずうるさいなあ·····」
ロンは煩わしそうにしながら、トランクから栗色こドレスローブを引っ張り出してから、籠にバサリとかけてから声をかき消した。
(あれがロンのドレスローブ?)
ひらひらとしたドレスローブにアリアネは思わず笑いそうになったが、それをぐっと我慢した。
もし笑ってしまえばロンの機嫌を損ねてしまう。
「バクマンがホグワーツで何が起こるのか話したがってた」
ロンはハリーの隣に腰掛けながら、不満げにしていた。
「ワールドカップのときにさ。覚えてる?でも母親でさえ言わないってことって、いったいなんだと──」
「しっ!」
ハーマイオニーが突然、唇に指を当てながら静かにさせると隣のコンパートメントを指差した。
どうしたのだろうかと全員で耳を澄ませると、聞き覚えのある気取った声が聞こえてくる。
「·····父上さほんとうは、僕をホグワーツでなく、ほら、ダームストラングに入学させようとお考えだったんだ。父上はあそこの校長をご存知だからね。ほら、父上がダンブルドアをどう評価しているか、知っているね。あいつは『穢れた血』贔屓だ。ダームストラングじゃそんな下らない連中は入学させない。でも、母上は僕をそんなに遠くの学校にやるのがおいやだったんだ。父上がおっしゃるには、ダームストラングじゃ『闇の魔術』に関して、ホグワーツよりずっと気の利いたやり方をしている。生徒が実際それを習得するんだ。僕たちがやってるようなケチな防衛術じゃない·····」
マルフォイの声だった。
その声にアリアネの機嫌は急落下していき、ふてぶてしい表情になる。
そんな彼女をちらりと見てから、ハーマイオニーは立ち上がって静かにコンパートメントの扉を閉めた。