第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「ポッターとフリートは他の誰よりブラックを信用した。卒業しても変わらなかった。ブラックはジェームズとリリーが結婚した時、新郎の付き添い役を務めた。ウィリアスとヘレンの結婚式の時も、ウィリアスの付き添い役を務めた。ジェームズとリリーの2人はブラックをハリーの名付け親にした。ハリーはもちろんまったく知らないがね。こんなこと知ったら、ハリーはどんなに辛い思いをするか」
私とハリーの身体は震えていた。
知らなかった、そんなこと全然聞いたこともなかった。
父さんと母さんの付き添い役をブラックがしていたこと、ハリーの名付け親がブラックだったことなんて。
「ブラックの正体が『例のあの人』の一味だったからですの?」
「もっと悪いね……」
魔法大臣が声を落とした。
「ポッター夫妻とフリート夫妻は、自分たちが『例のあの人』に付け狙われていると知っていた。ダンブルドアは『例のあの人』と緩みなく戦っていたから、数多の役に立つスパイを放っていた。その内の一人から情報を聞き出したダンブルドアは、ジェームズとリリー、ウィリアスとヘレンにすぐに危機を知らせ、4人に身を隠すように勧めた。だが、もちろん『例のあの人』から身を隠すのは容易なことではない。ダンブルドアは『忠誠の術』が一番助かる可能性があると4人にそう言ったのだ」
「どんな術ですの?」
フリットウィック先生が咳払いして、『恐ろしく複雑な術ですよ』と相変わらずの甲高い声を出した。
「1人の、生きた人の中に秘密の魔法で封じ込める。選ばれた者は『秘密の守人』として情報を自分の中に隠す。かくして情報を見つけることは不可能となる。『秘密の守人』が暴露しないかぎりはね。『秘密の守人』が口を割らない限り、『例のあの人』がリリーとジェームズ、ウィリアス、ヘレンの隠れている村を何年探そうが、4人を見つけることは出来ない。たとえ4人の家の居間の窓に鼻先を押し付けるほど近づいても、見つけることは出来ない!」
「それじゃ、ブラックがポッター夫妻とフリート夫妻の『秘密の守人』に?」
「当然です」
そこからは話なんて聞きたくなかった。
もう分かっていた、誰が私の両親とハリーの両親の居場所をヴォルデモートに教えたのかは。
だけど、先生たちは話を辞めることはなかった。