第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「『全身金縛り』をかけたの。ネビル、ごめんなさい」
「それと、念の為に」
私も呪文を唱えると、ふわりと空中から縄を現してネビルの体に巻き付けた。
もしの為にと固く結んでから動けないようにしてしまう。
「ネビル、こうしなくちゃならなかったんだ。わけを話してる暇がないんだ」
「ごめんなさい、ネビル。許してちょうだいね」
「あとできっとわかるよ。ネビル」
私たちはネビルを跨ぐと透明マントを被った。
なんとか全員隠れることが出来たけれど、私たちはフィルチにバレないかや彼が居ないだろうかと神経がピリピリとしてしまう。
ピーブズとも会いたくない。
なんて思いながら階段の下まで来ると、そこにはミセス・ノリスが歩いていた。
「ねえ、蹴っ飛ばしてやろうよ。1回だけ」
「辞めなさいよ、ロン」
ハリーは首を横にふり、私はそう言い蹴飛ばすのを辞めさせた。
途中でミセス・ノリスの目が私たちの方へと向いたけれど、彼女は特に何かをするわけでもなかった。
そして4階に続く階段の下にたどり着くまで、特に誰もいなかった。
ピーブズが4階への階段の途中でヒョコヒョコと誰かをつまづかせる為か、絨毯を丸めている。
「そこにいるのはだーれだ?」
階段を登っていれば、ピーブズがそう声をかけてくる。
「見えなくたって、そこにいるのはわかってるんだ。だーれだ。幽霊っ子、亡霊っ子、それとも生徒のいたずらっ子か?」
ピーブズが空中に飛び上がると、私たちの方へと視線を向けていた。
「見えないものが忍び歩きしてる。フィルチを呼ぉぼお。呼ばなくちゃ」
どうしようと思っている時、ハリーが声をあげた。
「ピーブズ。血みどろ男爵様が、わけあって身を隠しているのがわからんか」
その言葉を聞いた瞬間、ピーブズは空中から転落してしまいそうになっていた。
「も、申し訳ありません。血みどろ閣下、男爵様。手前の失態でございます。間違えました……お姿が見えなかったものですから……そうですとも、透明で見えなかったのでございます。老いぼれピーブズめの茶番劇を、どうかお許しください」
「わしはここに用がある。ピーブズ、今夜はここに近寄るでない」
「はい、閣下。仰せの通りにいたします。首尾よくお仕事が進みますように。男爵様。お邪魔はいたしません」
ピーブズがサッと消えてしまった。
