第2章 小豆娘
…という具合に、俺にとってはなかなかない、とても濃い一日だった。
今日は約束した小豆娘…もとい、花里の店に行く予定だ。
昨日は食料を食い尽くしてしまった客がいたので、急遽店の者総出で買い出しに出たのだと聞いたのだが、本当に今日で大丈夫だっただろうか。
言われるがまま了承してしまったが…
ダメならまた後日出直すとしよう。
そんな事を考えながら歩いていれば、いつの間にか蝶屋敷の前まで辿り着いていた。
考え事をしていればあっという間だな。
門をくぐると、誰かが玄関前の掃き掃除をしている。
髪型はおかっぱで、頭の両側には蝶の髪飾り。
桃色の帯を付けている。
蝶屋敷の三人娘の、名前は…“きよ“だったろうか?
「あ!冨岡様!」
その娘は俺に気が付くと、笑顔で駆け寄ってきた。
「こんにちは!いつもお仕事ご苦労様です!」
「あぁ。お前達もいつもご苦労様だ。お前は…きよ、だな?」
「正解です!」
良かった、合ってた。
「今日はどうされたのですか?…まさか、どこかお怪我を⁈」
さぁっと顔が青ざめるきよ。
そのまま「どこにお怪我を⁈」と俺の身体の異常を探し始めるので、慌てて止めさせた。
「俺はどこも怪我してない。大丈夫だ」
「良かったです〜!」
心の底から安堵するきよに、そんなに心配してくれるのかと感心を覚える。
「胡蝶はいるか?」
「はい!診察室にいらっしゃいますのでご案内しますね!」
何度も来ているので案内は不要だ。
と言うより先に、「こちらへどうぞ!」ときよによるご案内が始まってしまったので、まぁいいか…と、ここは素直に案内される事にした。
診察室の前まで来ると、「では失礼します」と言ってきよはまた玄関の方へ戻って行った。
…ここの三人娘達は、他の隊士にもああやって心配をしているのだろうか。
毎回大変だろうに。
彼女達の心が擦り減らないだろうかと、少々心配になった。