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水色の恋模様 【鬼滅の刃 冨岡義勇】

第2章 小豆娘



俺がもっと器用だったならば…。
やはりこのまま歩かせるのは可哀想なので、手当てが済んでからおぶってやると申し出る。

始めは遠慮していたが、「痛いのだろう?」と聞くとやっと認め、おずおずと俺に背負われに来た。

落ちないように腕を前に回せと促す。
それを確認してから歩き始めた。

背負った重みが丁度良く、妙に心地良い。

もう忘れかけていた
人の温もりというのはこんなにも
温かかったのか…

花里は疲れていたのだろう。
揺られて心地良くなったのか、俺の背中でうつらうつらし始める。
寝かせてやりたいのは山々なのだが…

家が分からん。


「まだ寝るなよ」


申し訳ないが、今寝られると非常に困ってしまうのだ。
俺の一声に、一気に現実へと引き戻されてしまった花里。


「はい!寝ません!」


眠気が吹っ飛ぶような威勢の良い返事に、思わず笑ってしまった。


それから家に着くまで花里は色々な話をしてくれた。
俺も少しだけ自分の話をして、お互い天涯孤独という事が分かった。


「一人で淋しくないですか?」

「…もう慣れた」


…淋しいよ
本当は、とても…

大切な人を二人も失って
平気でなんかいられない

でも淋しいなんてもう素直に言葉にできなくて
別の言葉で誤魔化したんだ


俺の“もう慣れた“を、花里はどう感じただろうか。

何も言わず、花里は腕にぎゅっと力を込める。
決して力強いものではなく、程良い締め付けに、昔の懐かしい記憶が蘇る。

“義勇はいい子ね“と俺をよく抱きしめてくれた蔦子姉さん。

もう触れることはないと思っていた人の温かさに心が安らいで、もうずっと、このままでもいいなんて思ってしまった。

そんな事、口が裂けても言えない。

だから花里の家に着くまでの間だけ、俺は黙って花里にされるがままになっているふりをした。

この温もりを、忘れたくなかったから…






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