第5章 日中米/逆ハー? 血ヲ奉納セヨ
そうこうしていると、二人の姿が霞のように掻き消える。
「What!? 消えた!? な、なんだい、変わり身の術とかかい!?」
「アル……あー、えーと……」
「ていうか一体どうやって俺をここにショウカンしたんだい!? おもしろそうなことには俺もまぜてくれよ!」
「うん……わかった……わかったから食べ終わってからしゃべって……」
境界が歪んだ、とはどういうことだろうか。
いずれにせよ、脅しでもなんでもなく、“戻る”のに時間がかかりそうだった。
いつもなら、今くらいにまた前兆があるはずなのだ。
彼らの口ぶりから、またすぐ私を狙ってくるつもりだろう。
激しい疲労感とともに、ため息がでた。
「なんだい? 困りごとならヒーローにおまかせなんだぞ!」
場違い(世界観違い)な底抜けに明るい笑みに、なんだか気が抜けて、笑いがこみあげてきてしまった。
「……そうだよね、うん。頼りにしてるよ」
「もちろんさ! ところで、急のことだったからデザートのパイを置いてきちゃったんだぞ。このへんにアイスクリーム屋とかないのかい?」
「……ぷっ、ないない」
「ハっ、そうか! せっかくだし和菓子を食べなきゃなんだぞ!」
心地いい脱力感を感じながら、アルへの説明と、異界から抜け出す手段に頭を悩ませるのだった。