第4章 米/甘 私は恋を疑う
最終下校時刻の5分前を知らせる鐘が、急かすように鳴り響いた。
窓の外はもう真っ暗で、校舎の上で三日月が燦然と輝いている。
遅くまで活動していた部活がミーティングで続々と円をなしつつあり、騒がしさは増していくばかりだ。
私は伸びをして、作業で凝り固まった肩をほぐした。
「はあ……って急がないと閉められ――」
「ーっ! 迎えにきたんだぞ!」
突如部屋のドアがパシーン! と開いて、外以上に騒がしい人物が入ってくる。
年中無休な笑顔を浮かべたアルフレッドだ。
私は帰る支度をしつつ、「わかったわかった」と生返事をした。
教室を出ると、「ちょっと待ってて!」と言い残し、アルがどこかへ走っていく。
何事かと思いつつ待機していると、
「あららちゃん!」
「っ!?」
背後の暗がりからにゅっとフランシスが顔を出した。稀によくあることだ。
驚く私に、フランシスはウィンクして誘う。
「一緒に帰らない?」
「大変ありがたくないお誘いですが丁重にお断りさせて頂きます」
「なんかおかしくない!?」
大げさなまでにショックを受けて、嘘泣きするフランシス。
どう追い払おうか考えていると、後ろの方から黄色い声の群れが近づいてくる。
「先輩今帰りですか?」
「先輩ここにいたんですか!」
「一緒に帰りましょうよ!」
怒涛の勢いの彼女たちに、フランシスはあっという間に包囲された。
フランシスとの距離が一気に離れる。
いきなりのことだが、毎度のことだ。もう驚きはしない。
「あっちゃん!」
すきをついて群衆をすり抜ける。
手を伸ばし叫ぶフランシスを残して、面倒事が起きる前にその場をあとにした。