第11章 乞い求む【土方歳三編】
「……この先、一体どうなってしまうんでしょうか」
「近藤さんは怪我でふせってる、薩長と戦おうにも、刃物じゃ銃には適わねぇ。……八方塞がりだな」
装備が旧式であっても、率いる者に戦う意思があれば、指揮を高める事は容易い。
でも、その率いるはずである慶喜公は戦うことに前向きの様子じゃない。
そうなれば、自分たちは何の為に戦うのか、これから一体どうなるか。
不安になってしまうのも当然と言えた。
「お先真っ暗だよな。あれこれ考えても落ち込むだけだし、吉原にでも遊びに行くか?」
「吉原……ですか?この時期に……」
「馬鹿野郎!この時期だからこそ、英気を養わなきゃならねえんじゃねえか!」
「そういえば、斎藤さんは一体どこに?最近、姿を見かけないんですけど」
私と一緒に洗濯物を洗っていた野村君は、不思議そうな表情をしながら永倉さんと原田さんに尋ねた。
そういえば最近、斎藤さんの姿をあまり見かけなける事がない。
「斎藤なら、怪我人や病人の様子を見る為、松本先生の所に出かけてるみたいだぜ」
「なるほど……」
次の戦では、必ず勝たなければいけない。
皆さん、その為に頑張っていらっしゃるのはよく分かっているけれども……。
京にいた頃のような賑やかさや暖かい時間は、今はほとんど無かった。
あの頃が懐かしい。
そう思いながら、私は洗濯物を入れていた桶を抱きしめながら地面へと視線を落としたのだった。
そんなある日のこと。
意外な客が釜屋へとやってきた。
「こんにちは、ご無沙汰してます」
「……八郎お兄さん!?」
「お久しぶりです、千尋ちゃん。元気そうで、無事で良かったです」
私の目の前にいたのは八郎お兄さんだった。
彼も鳥羽伏見の戦いに参加していたので、大丈夫なのだろうかと不安になっていたけれども、どうやら元気そうで一安心する。
「八郎お兄さんも、ご無事でなによりです·····。そういえば、今日はここに用事が?」
「ええ。実はトシさんに用事があって来ました。取り次いでくれますか?」
「わかりました。少々お待ちください」
その後、私は八郎お兄さんを土方さんのお部屋へと案内した。
案内して少半刻ぐらいが経った時、私はお茶のおかわりをと思い土方さんの部屋の前に来ていた時だ。
「何だと、そいつは本当か!?」
「はい。何でも、急に外せない用事が入ったとのことで」
