第18章 裏切り者
────ドイツ・フランクフルト
ヨーロッパ有数の大都市である、フランクフルト。
組織専用の小型飛行機でピンガと共に訪れた。
近代的な高層ビルとレトロな建物が入り混じる街並み。
広場では多くの観光客などで賑わっていた日中。
夜になると人けがなく、静けさが漂っていた。
「ユーロポール・防犯カメラ・ネットワークセンター」
「え?」
「ここに侵入する。誰もいねぇと思うが・・・お前は入り口で見張ってろ。足引っ張るなよ」
無言でスマホを弄るピンガの後を追っていると、いつの間にか目的地に着いていた。
どこから入手したのか、彼はポケットから出した鍵でセンター内に侵入した。
コツコツ・・・と私たちの足音だけが響く。
「ここにいろ。いいか?足を引っ張るな、わかったか」
「・・・さっき聞きました」
「あァ?」
「いえ、何でも」
鋭い目で睨まれ、ピンガの盛大な舌打ちがシンとした部屋に響く。
念を押すほど失敗を恐れているらしい。
苛立ちを剥き出しにしたまま、カタカタとパソコンを操作し出した。
私は言われた通り部屋の入り口に立ち、たまに左右を見渡すが人がいそうな気配はなく。
情報を抜き出し終わるのを待っていた。
────どのくらい時間が経過しただろう。
時計を確認すると、ここに到着してから10分近く経っていた。
苦戦してる・・・?
バーボンに同行した時は、ものの数秒で終わった記憶がある。
正直、私の方が早いのでは・・・と考えてしまった。
「うるッせェな!!しっかり見張っとけよ!お姫様よォ」
「・・・・・・・・・」
ドアを薄く開け、ちょっと様子を見ただけでこれだ。
誰もいないからとそんなに大声を出して・・・・・・。
パソコンを盗み見るとUSBに移行している最中だった。
良かった・・・できたんだ。
ホッと胸を撫で下ろす。
不機嫌なピンガに言い返すとまた面倒なので、作業が終わるまで黙っておくことにした。