第6章 出張2日目
「あ、あの〜、こ、困ります。プライベートでなんて。」
背中に汗が流れた気がした。
「何で困るの?」
そう聞かれて何と答えて良いか迷う。
「あの、私、、、」
そこまで言いかけた時、社長に遮られた。
「好きな奴でも居るとか?」
えっ?
ドキッ。
「相手は浅田君だったりして」
えっ?課長?何で?
「な、何で課長なんですか?」
社長、一体、何を考えてるんだろ?
「えっ?違う?そんな風に見えたけどな?」
社長は、そう言うと私の手を少し強く握って来た。
確かに課長は浅岡さんにそっくりで、たまに課長を浅岡さんだと錯覚を起こす事はある。
その時の事を言ってるんだと思う。
でも、そんな事、説明しても分かってもらえない。
「あ、あの、手、離して頂いてもよろしいでしょうか?」
遠慮気味に言ったら、渋々、離してくれた。
「たとえ、気持ちが浅田君にあったとしても僕は諦めないよ。」
大きな目で見つめられて動けなくなった。
「浅田君とは付き合ってる訳ではなさそうだし、少しは僕の事も考えて欲しい」
社長が私の事をなんて考えても居なかったから戸惑ってしまい声も出せなかった。