第3章 距離2
「お前、今日は部屋で見張れ」
「……なんて??」
五条の言ってる意味が分からず聞き返せば、睨まれ「敬語」と言われる。
「…なんて言いました?」
敬語で聞き返せば、面倒くさそうに頭をがしがし掻きながら、乱雑に答えた。
「だーかーら!見張れっつってんの!」
「いつも見張ってますけど」
「外でだろ。中で見張れ」
「………」
聞き間違いではなかったようだ。
「なんでか聞いても?」
「お前の嫌がる顔が見たい」
クソじゃん。
声に出さなかったおれを褒めてほしい。
「まぁ、お前が?俺に傷がついてもいいってんなら、話は別だけど?」
そういわれると、おれには「はい」の選択肢しかなくなる。この家に来て数か月。呪術について学んでいくうちに、五条悟という人間の価値というのもようやく理解できるようになってきたところだ。
それでなくても過保護な五条家だ。当主様や奥様に会ったことはないが、傷がつけばぽいと捨てられるかもしれない。…捨てられるだけですんだら、ましか。代わりなど本当、あふれんばかりにいるんだから。
「はーーーっ、」
「やんの?やんねぇの?」
「やりますよ。…彼女さんは、いいんですか?」
「いや、あいつ彼女じゃねぇし」
「………」
まぁ、たしかに。言われてはないな。じゃあ、いっか。