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*名探偵コナン*短編集*

第1章 *File.1*諸伏 景光*


「オレにも、何が何だか」
「夢じゃ、なかった?」
「でも、この世界にはない?」
「…うん」

『名探偵コナン』と言う、物語は。
でも、確かに此処にいる。
出逢ったあの世界に存在した、あの物語に登場した人物は、みんなこの世界に。

「私だけが、部外者?」
「う〜ん」

お互いに、記憶と現在が定まらずにいた。
あの時と何かは一致しているのに、今とは何かが一致しない。

「あのー」
「いい加減、この状況を説明しろ、ヒロ」
「ったくだ!」
「まあ、そう言ってやるな。深いワケあり、なんだろ?」
「あー。ごめん」

困惑と言うよりは、三人の咎めるような強い視線が全身に突き刺さって痛い。
班長だけは、穏やかな表情でオレと雪乃を見比べている。

「その前にお嬢さん、隣から荷物を持って来た方がよくないか?」
「話を一から全部聞かないとね!」
「うっ」

萩原がウインクすると、雪乃は恥ずかしげに言葉を詰まらせた。

「……」

結局、説明するハメに?
ホントは今直ぐに帰りたいんだけど?
いや、今そうしたところで、絶対に後日説明させられるから、結果的には同じ?なのか…。
ハア。
もう、ため息しか出ない。

「つ、ついでにお手洗いに行って来ます」

班長からの提案に、雪乃がハッとして我に返る。

「大丈夫。オレはもう消えたりしないよ」
「…絶対、に?」
「ああ」

コクリと頷くと、細い肩に手を置いて、頭のてっぺんにキスを一つ。

「!?」

びっくりした様子で、唇が触れた髪を押さえる。
あー、もういちいち色々と可愛すぎる。
コロコロと変わる表情も、その仕種一つ一つが。
今すぐに雪乃を抱き締めてキスをしたい思うのは、仕方無いと思う。
よく我慢出来てるな、オレ。

「また後で」
「うん」

不安気だった瞳の色を少しだけ安心した色に変えて頷くと、雪乃はこの部屋を出て行った。
今度は、再会の喜びを果たすために。
もう二度とその手を離さない、ために。


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