第8章 ぼんスケルトン目線2
「これは……」
食卓にあったのは、人間の姿をした人形だった。飼い主ちゃんって、こういうのが趣味だったんだっけ。ぐるりと見渡せば、部屋の一角には大量の人形が置いてある棚が。前からあったのかもな。
「あ、ぼんスケルトン、珍しいね〜」
上から声が降ってきてぎょっとした。飼い主ちゃんがリビングに戻って来たらしい。
イタズラなんてしていないから、と俺は後ずさりして食卓からずるり。絶対落ちたな、と思った矢先、飼い主ちゃんが上手くキャッチしてくれて事なきを得た。
「大丈夫? 怪我はない?」
怪我はない。怪我はないんだけども、飼い主ちゃんはかわいいんだからこれ以上近づかないでくれって思っていたら、飼い主ちゃんがため息をつきながら俺を下ろして難しい顔をした。
どうしたんだろうか。話くらい聞くよという意味で俺は弓矢を置いてその場に座った。察しのいい飼い主ちゃんは、話を聞いてくれるってことかな、と俺の頭を撫でた。ちょっと恥ずかしいな。
「あのね……」
それからゆっくりと話し始めたかと思いきや、食卓に置いてある人形の服を急に脱がし始めた。ちょっと待って、何してんの?
俺はどう反応したらいいか分からずに人形と飼い主ちゃんを交互に見ていたら、とうとう人形の服を手に俺の方を見つめてきた。え、なんだろう。これから何されるのか分かった気がする。
「これ、ぼんスケルトンに似合うんじゃないかなぁって思って」
やっぱり?
飼い主ちゃんは俺の目の前でヒラヒラキラキラの人形の衣装を見せびらかした。いや、なんで? と思ったが、そうか、人型をしているMOBは五人の中で俺だけだ。
「こっちでもいいから、ね? 着てみない?」
と飼い主ちゃんは言いながら、男性人形の服を取り出す。どっちにしろ、ヒラヒラキラキラしてるのは同じなのよ。俺に本気で似合うと思ったの……?
とはいえこんなにお願いされたら断る方法も思いつかず。しばらく俺は、飼い主ちゃんの着せ替え人形となった。
「かわいい〜♪」
……飼い主ちゃんが楽しそうなら、まぁ、いっか。