第30章 救済
無言のまま歩いていると
ポケットにしまっていたスマホが振動し足を止めた。
スマホの画面を確認すると、
そこには赤井さんの名前が表示されていて…
赤井さんが無事だったんだと分かって
安堵感でいっぱいになった。
立ち止まったまま着信画面を眺めていると
江戸川くんは赤井さんからの電話だと察したようで…
「先生、俺は灰原とみんなの所に戻るから。」
『うん……ありがとう、江戸川くん。
灰原さんも…ハンカチありがとね。』
灰原さんは私の電話の相手が気になっていたようだけど
赤井さんのことを話すわけにもいかないので
私は2人から離れ少し歩いたところで電話に出た。
『もしもし…』
「美緒、無事か…?」
『はい…今どこにいるんですか…?』
赤井さんが無事なのは分かったけど
声を聞いたらすぐに顔が見たくなって……
赤井さんがいる場所を教えてもらい
電話を切ってそこに向かって走った。
どうやら入場ゲート付近にある林の中にいるそうで
たくさんの木の中を見渡しながら進んでいると
後ろから肩を掴まれ、振り返った先には
先程見た時よりも服や顔が汚れ、ボロボロの状態の赤井さんが立っていた。
「お前…怪我してるじゃないか…」
『観覧車のゴンドラの中で…
ちょっとぶつけちゃいました。』
「…見せてみろ。」
赤井さんはハンカチで傷口を押さえていた私の手を退けて
傷の状態を確認すると眉間に皺を寄せていた。
『こんな怪我すぐに治りますよ。
それより…赤井さんが無事でよかったです。』
「美緒も…無事でよかった…」
私の体を優しくギュッと抱きしめた赤井さん。
この人の温もりに包まれると、とても安心できて…
私も赤井さんの背中に手を回し、
存在を確かめるように強く抱きしめ返した。
「早くお前の手当てをしないとな…帰るぞ。」
『帰るって…どうやって…?』
「?車で帰るが…何か問題でもあったか?」
『え!?そんなボロボロなのに運転するんですか!?
傷痛みますよね…!?』
「大した事ないと言っただろう。
運転くらい余裕だ。」
あ、ありえない……
この人どれだけ丈夫な体してるんだろう…