第8章 ラプンツェル…少女の物語♥♥
自分よりもずっと大人のはずのフリン。
なのに、急にろくに理由も言わず指図するようになった。
マドカには最近の彼が何を考えているのかちっとも分からなかった。
(元から分かんないけど………)
今は分からないことがイライラする。
それでも黙っていたらフリンが帰ってしまうような気がしたので、マドカは振り向いてちらと彼を見た。
「………フリン?」
彼は膝の上で顔を伏せたまま動かなかった。
その様子が雨の日の自分と似ていた。
四つん這いになりフリンを刺激をしないように近付いてみる。
呼吸が苦しいのかもしれない、と思ったからだ。
「………どうしたの? どこか…泣いているの? ねえ」
よく見ると彼の肩が規則的に静かに動いていた。
胸を撫でおろし、「大丈夫?」とそこに手をかけようと腕を伸ばすと逆にフリンが彼女の手首をつかんだ。
「…えっ……あ」
腰を強く引き寄せられたと思う間もなく。
フリンと顔がぶつかりそうになり咄嗟にマドカが目をつぶる。
「っ……? っぅっ…ッ」
何か口に押し付けられたのに気付いた。
目を開けてもそれがフリンだと認識するまで時間がかかった。
フリンの目は薄らと開いていたが、どこかうわの空だった。
「や……っ何、やめ……離し」
顔を背け、彼の胸をドンドン拳で叩いてマドカが抵抗した。
「ちょっ…とフリ……嫌っ」
胸を手で包まれる感触をマドカは知っている。
それとフリンが結び付かない。
「嫌ならいいよ。 僕は他の男とは違うってことだろうから」
彼の、とても静かな声だった。
「………」
「そう分かってくれてるならいいんだよ」