第64章 幸福
「このまま美緒と2人でいたいけど
そろそろ時間だから行こうか。」
零くんは私の手を優しく握り
ドレスで歩きにくい私をエスコートしてくれて
2人で一緒にゆっくりと階段を上った。
手を繋いだまま階段を上ると屋上に出たので周りを見渡すと、
その屋上は綺麗な緑の芝生が敷かれていて、
江ノ島と海が一望できるガーデンチャペルだった。
たくさんの花が飾られている木でできたウェディングアーチが置かれていて、
ゲスト席である白い椅子には、さっき会ったエリスと瑞希だけじゃなくて私達の友人である同期のみんなが揃って座っていた。
『やっぱりみんなも来てくれてたんだ。』
「挨拶は式の後でな。」
零くんに手を引かれ、
いつの間にか屋上に来ていた神父さんの前に2人で立った。
どうやらこの神父さんは零くんの上司の知り合いだそうで
事前に頼んでここまで来てもらったとコソッと教えてくれた。
本来の挙式なら聖書を朗読したり讃美歌の斉唱があるんだろうけど、今回は色々すっ飛ばして誓いの言葉から始まった。
「新郎、降谷零さん。
あなたは新婦、若山 美緒さんを妻とし、
病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も…
死が2人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、
心を尽くす事を誓いますか?」
「はい。誓います。」
「新婦、若山美緒さん。
あなたは新郎、降谷零さんを夫とし、
病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も…
死が2人を分かつまで命の続く限り、これを愛し、敬い、
心を尽くす事を誓いますか?」
『…はい。誓います。』
お互いに誓い合った後、ホテルの従業員の人が私達の元にリングピローを運んできた。
そこにはサイズの違う指輪が二つ置かれていて
結婚指輪まで事前に用意していた零くんに驚かされた。