第2章 First dreamers
「どうして、っ。君は、そこまで…?いいのか?」
「ああ。美しい帆船を作った報酬だ。龍水は家には侵入不可にする。まあ私と帆船航海に出るから、これまでより構って来ないが。どうだ、乗るかい?」
「も、勿論!ありがとう!」
頷くSAIを見て、ニッと笑った。
「あの、」
「ん?なんだい」
契約書をざっくり紙に書いてゆくに、SAIが遠慮気味に聞いた。
「姉さん、って呼んでもいいかな」
彼からしたら、甘えられる存在は居なかったのだろう。本当に欲しいモノをくれたのも。が頷いた。
「ああ、いいよ。君は今日から私の弟だ」
契約書を作り、グループCEOである兄に電話報告。契約書も作成し終えて、サインを貰う。部屋を出た所で、SAIが話し掛けた。
「姉さん。無理やりでも、僕が設計したから。最初の航海だけ、乗せて貰えないかな」
恐る恐る口に出した彼の言葉に、は動きを止めた。
「義務感で乗らずともいいんだぞ?私含めて航海のフォローはするが、危険なのに変わりは無い」
「雑用とかで大丈夫だから。僕もっ、何か手伝いがしたいんだ」
が分かったよと微笑むも、突然動きが固まった。彫刻化したが何とか口を動かす。
「さ、SAI君。後ろ」
え。嫌な予感がしつつSAIも振り返ると。
「ほう?俺が乗せる気だったが、よもやSAI。貴様の方から乗る気か!引き摺って乗せる手間が省けたな。よくやったぞ!!」
「ピギャアアアアアアア!!」
言質を取った龍水が捕獲。貴様は航海士の勉強だ!航海術を身につけろ!貴様なら海図のsinθcosθtanθやらの計算くらい余裕で出来る!!と、夏休みの間を全て航海士の勉強に注ぎ込まされた。そして冒頭に至る。二日間の試験を終えたSAIは、より貸出された一軒家の玄関で倒れていた。