依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第6章 6年間の始まり02
「興味はある」とあった彼に、まあ世間話程度か、と自身の恋愛について話す。
「同じ、公務員の人でした。彼は、警察組織の人だったけど。5つ、かな。年上で葉巻を好む人でした」
「別れた理由は?」
「彼は、若くしていち組織を背負う立ち位置になったからいつも忙しそうで...2年目?に昇格に伴って北の方に異動したので遠距離になりました。お互い業務が忙しくて、だんだん連絡頻度が下がって自然消滅です。」
改めて話すと気恥ずかしいなと、適度に終わらせて下げていた目線をあげる。
その瞬間、ぐっと上体を机越しに寄せてきたシャンクスは、ふ、と挙げた左手の人差し指で🌸の唇。その右下あたりをそっと撫でた。
急に縮まった距離にドキリとして、絡まっていた視線が少し下に逸れると、伏し目になった表情に瞬きも忘れた。
ゆっくりとあげられた視線と合い、少し色素の薄い瞳に、ほう、と薄く唇を開く。
🌸がなにか言いたげに見えたのか、どうした、と囁くように問う声が、酷く甘ったるく聞こえる。
(あ、れ?ちょっと、ダメ、かも)
一瞬触れられただけの場所に、徐々に熱が集まるような感覚がして、キュン、と甘さを覚える感覚をごまかそうと少し、舌で唇を潤した。
「クリームが、ついてるように見えた」
突然の接触にドキドキしたままで、しばらくシャンクスの言葉の意味を理解できずに、え、へ、と変な言葉が漏れた。
テーブルにあったペーパーで、🌸に触れた指先を拭いているシャンクスに、慌てて自分で口元を拭う。
ペーパーを畳む彼の指先が視界に入る。
爪は短く切りそろえられていて、指は細くて長くて、というわけではなく、寧ろ、無骨で少し厚みがあり力強さを感じる。
どうやら左利きらしく、腕時計は右手首。
今、カップを持ち上げるのも、先の公園でナンパ男を捻り上げたのも、そして、🌸の口元を拭ったのも左手。
話をする中でふと手振りを入れる時も、動くのは左手だった。
長めの前髪を軽く払う時も。
彼の中で話の区切りなのか、喋るときにトン、と左手の中指でテーブルを叩く。
目を合わせるほどの勇気はなくて、ちらり、と見上げると、その丸い目が柔らかく笑った気がした。