第8章 一夜限りの夢の宴
「ドラゴがいちま〜い、にま〜い……」
千空の科学ラボ。中には科学学園きっての頭脳派が勢揃いしていた。石神千空にあさぎりゲン。ラストに。
「足りないな、コレ。ちょっとだけ。全く龍水君は、こういう所本当に抜け目が無いな?」
天才軍師、六道院蒼音。三人でドラゴを囲んで何やら話し込んでいた。
「三人ともどうしたの?」
ラボを覗き込む杠に、あ、杠ちゃんと蒼音が声をかけた。
「龍水君がドラゴ溜め込み加減を程よく保ってて。つまり、ほぼ船が出来てるのに肝心の石油をギリギリ買えないんだ。全く、困った話だよ」
杠が、ワオ!!と吃驚する。無理もない。船がせっかく頑張って出来たのに、出港出来ないのだから。
「まあ、俺らがあの商売人を舐めてた所はあんな。軍師。テメーの色仕掛けで何とか出来ねーか」
「おい千空君。やめたまえ。確かにそれは効く。バチくそ効くぞ?効くが後で私達が纏めてしっぺ返し食らうのが目に見えてるからな」
蒼音が千空にジト目で突っかかった。一方ゲンは蒼音の自信に引いている。
「《効く》って三回言ったね?蒼音ちゃんカード切れば確実に行けるけど、このタイミングで出したら何か条件付けてきちゃいそう。ドラゴ流通してる割合把握してるし、うちらの狙いモロバレだろうしね。というか絶対効く自信があるのゴイスー……」
蒼音の嫌がる気持ちは分かる。彼女は龍水に心底惚れ、3700年起き続けて彼を起こしては、なるべくドラゴを溜め込まない様に裏であれやこれやと手を回していたのだ。自身が溜め込んだお金は、科学学園の特別講師を呼んだり、千空達から科学学園教材の科学グッズを自腹で購入して還元した。ちなみに目の前の軍資金には蒼音からの寄付金もある。流石にこれ以上頼るのは酷か。ならデパート千空のセールだ、となるが少し悩ましげな蒼音。
「おい軍師。どうかしたか」
「ん。いや、何でもない」
物欲の権化の龍水はともかくとして。果たしてこの新世界の人は、セールでもそんなにポンポン気軽に服を買うだろうか?蒼音は歌手としてその辺の美的センスは磨いている。ライブ衣装の様に、皆に一夜限りで見せる服には手を抜かない。しかしストーンワールドでは、せっかく着飾っても直ぐに汚れる上に洗濯機も無い。