第1章 貴方は誰を選びますか (烏 青 音 梟)前編
部活が終わってすぐ
孝ちゃんが私に駆け寄ってくる
「、俺着替えてくるからまた昨日みたいに下で待っててくれるか?」
『はーい』
着替えを済ませて下で待っていると孝ちゃんが飛び出してきた。
「おまたせ!帰ろ!」
『お疲れ様孝ちゃん』
「ん、もな」
昨日と同じように2人で孝ちゃんの家に帰って美味しいご飯を食べさせてもらってお風呂に入って孝ちゃんのスウェットをかりて…。今日は1人でいたくなかった。あの日のことが夢に出てきそうで1人では寝られないと思った。
昔から怖い夢を見た時や心霊系のテレビをみたあとは必ず孝ちゃんが一緒に寝てくれた。大丈夫だよ、俺がいるよって背中をトントンしてくれるから安心して寝られたんだよなあ。
孝ちゃんがお風呂に行ってる間ウトウトしてしまう。ガチャっと部屋のドアが開いてまだ乾ききっていない髪の毛の孝ちゃんが「眠い?」って聞く。だから返事の代わりに両腕を伸ばした。眠たくなると孝ちゃんに抱きしめて欲しくなる。あったかくて優しい匂いがして安心するから。それを分かってるから何も言わずにぎゅーってしてくれる。
「はいつまでたっても甘えん坊だな」
こんなに優しく抱きしめられていても
脳裏を一瞬過ぎるあの日の記憶。
それが嫌で、孝ちゃんに申し訳なくて。
孝ちゃんの背中に回した腕に力を入れた。
『ん…落ち着く。』
「よーしよーし、おかえり。
これからはなんかあったらいつでも俺がいるからな。が東京いっちまってた3年間すげぇ寂しかったんだぞー。」
私に〝何か〟あったことに孝ちゃんは気づいてる。
気づいてて何も聞いてこないんだ。
『孝ちゃん…聞かないの…?』
「…聞かないよ。
まだ話したくないって顔してるぞ?」
そう言ってニコッと笑った孝ちゃんの優しさに胸があったかくなった。こんなにも優しい人に触れられたのに私は突き飛ばしたんだ。最低だな。
「はなんも悪くないよ。
突き飛ばされたのは…そりゃ驚いたけど俺が近づきすぎた。ごめんな?気をつけるから…だから離れていかないでくれ。」
孝ちゃんは私の頭の中が見えてるの?
私を抱きしめながら優しく言葉を紡ぐ孝ちゃんが「離れていかないでくれ」って苦しそうに言うから
『離れるわけないよ』
思わずそう返していた。