第4章 君に笑顔を
わざわざ待っていてくれた竜胆君と三人で、朝ご飯を食べる。
久しぶりの賑やかな食事に、少し胸が温かくなった。
食べ終わり、竜胆君と二人で片付けを始める。
「別に手伝わなくても大丈夫だぜ? 飯作ってくれたし。何より、兄貴の視線が痛いっつーか、目が怖ぇ……」
竜胆君と並んで食器を拭きながら、顔だけで後ろを確認すると、テーブルに頬杖をつきながら、こちらを見ている蘭さんと目が合う。
若干目が据わってませんか。怒ってるような、不満そうな。 何がそんなに気に入らないのか、全然分からない。
「俺まだ死にたくないから、兄貴んとこ行けよ」
やっぱり意味が分からない。何故私がここにいたら竜胆君が死ぬ事になるのか。
布巾を取られてしまい、仕方なく蘭さんに近寄ると、手首を掴まれて引き寄せられた。
「……閉じ込めねぇと駄目か……」
横向きで膝に座らされ、姿勢を正す。凄く怖い事を言われたような気がする。
「なーんて、冗談だよ。半分は」
半分は本気だったのだろうか。やっぱり蘭さんは読めない人だ。
器用に私を抱えたまま立ち上がる。
「出掛けんぞ」
毎回の事ながら、抱っこされて部屋に連行された。
「とりあえず女物の服ねぇから、制服着とけ」
適当に服を掴んで、素早く部屋着を脱ぐ蘭さんの、素肌が見える。
体に刻まれた竜胆君の反対側にある模様は、相変わらず迫力があった。
無意識にそこに触れて、ハッとしてすぐに手を引っ込める。
「何? 気になるか?」
「あ、えと……痛くないんですか?」
「入れた時は多少はな。でも、今は別に。何、触りたい?」
少しだけ、興味がなくはない。けど、今更と言われればそれまでだけど、改めて蘭さんの体を触るのは、なかなかに勇気がいる。
考えていると、蘭さんの手が私の手首を掴んで、自らの模様に当てる。
「感想は?」
「蘭さんのお肌が……スベスベです」
「ぷっ、なーんだそりゃ」
いつもの意地悪な笑顔じゃなく、ただ純粋に笑う蘭さんを初めて見て、心臓が大きく跳ねる。
着替えを済ませた蘭さんが、再び私の手を取った。
マンションを後にした私達は、街へ向かう。
指を絡めてくるのが自然過ぎて、やっぱり慣れてるんだなと、何故か少し面白くないと感じてしまう。