(HQ|R18) セックストイを使わないと出られない部屋
第8章 バイブ
【バイヴと松川君】
♡ お相手は数年ぶりに会った元彼女
≫一静side
同窓会で四年前に別れた彼女と再会した。俺にとっては苦い再会でもあった。
いちかは相変わらず可愛いままで変わらない。落ち着いたら声をかけようそう思った時、花巻から“いちかちゃん、結婚が決まったらしいよ“と聞かされた。遠くからいちかを見つめるだけで胸の奥は痛む。
「俺の出る幕はなさそうだな…」
元彼からの“おめでとう”の一言はきっと要らない。そう言い聞かせて俺は声をかけるのをやめた。
同窓会は二次会へと移る。花巻達と一緒に予約している居酒屋の扉を開けたはずなのに気付いたら知らないこの場所にいて目の前にはバスローブ姿のいちかがいた。
「一静?」
「え?なんで?…何?その格好」
「全然分からない。だって今から二次会にってなってたよね」
「俺もそこまでしか記憶がない」
「待って。まずいよ、こんなところで二人きりなんて。それに何なの?この箱…。セックストイって…」
「とりあえず中開けてみる?」
「え?」
「この箱以外に出るヒントはなさそうだし」
「確かにそうだよね…。うん……分かった。開けてみて?」
そして二人で開けた箱の中身は一本のバイヴ。いちかは絶句していた。
「バイヴって…。これはまたハードルが高いな」
「こんなの無理だよ。一静はなんでそんな冷静なの?」
「俺だってまだ冷静じゃない。あそこのドアからしか出られそうにないし、でもこの箱に書いているようにこのお題をクリアしなきゃ多分出られない。それだけは確かだと思う」
「そんな、困るよ」
「俺だって酔いすぎて夢でも見てるのかなって思ってるよ。酒も回ってるし。とりあえず俺たちもちょっと落ち着こう」
「……うん、…そうだね」
いちかを宥めながらベッドへと腰掛ける。何も喋らなければただ無音が続くこの空間。スマホだって圏外だし時間を潰す術もない。しばしの無言が続く。