第5章 第四話 黒の教団壊滅事件!?
しばらくすると目を覚ますはずだと言われて、不二はホッとした。
一方、コムイに吹き矢を打たれたアレンと不二も、一時的なものだったため、体に異常はない。
アレンは診てもらった後、教団内の後片付けへと向かった。
「そろそろ僕も行ってくるよ、彩音」
ス、と立ち上がり、扉へと向かう。
君が起きた時に、ちゃんと迎えられるように。
「僕たちのために、リナリーたちが何か準備しているようだしね」
クスクスと小さく笑いながら、不二は彩音の部屋を後にした。
「周助…」
ありがとう、と呟いた彩音は起きていたのかはたまた―――――。
―――――夢を見ていた。
それは、遠い、遠い昔の夢だった。
緑が綺麗な丘の上。
自分の前を走る、少年と少女。
置いていかれないように、走って、走って…。
待って、と手を伸ばす。
その手は、届かない。
やがて少年と少女は見えなくなった。
周りが赤に染まる。
ゴポ、と咳き込めばそこにも赤。
ああ…私は、死ぬんだな…。
膝をついた血溜まりに映るのは、金色の瞳。
あなたはだあれ?
私はあなた。
―――――違う、それはお前じゃない。
声が聞こえた先に、眩い光が差し込む。
だけどそれは私にとって怖いもので…。
どうか…私を消さないで。
光の先へ、伸ばした手は誰かに握られた。
うっすらと目を開けると同時に頬に伝うのは涙。
視線を横にずらせば、ベッドの脇に座ってこちらを見ている視線とぶつかった。
「……。おはよう」
あぁ。とぶっきらぼうに答えたのは、ユキサの手を握る神田だった。
「変な夢を見てた気がする」
泣いていた理由を問えば、うーん…と考えながらユキサが答えた。
起きたらほとんどよく覚えていなかったのだという。
教団の片付けがある程度終わった頃、アレン、ユキサ、彩音、不二の4人に食堂へと呼ばれた。
もちろん、ユキサと彩音は目が覚めて体が落ち着いているなら、との事で。
ユキサの様子を見に来た神田が部屋に入って声をかけたが、反応がなかった。
そのため戻ろうと部屋を出ようとした所、酷く魘されてる様子のユキサに近づいた。