第4章 第三話 災いを呼ぶもの
そんな事を考えているコムイをよそに、ヘブラスカは続ける。
「まずは小鳥遊…お前のシンクロ率の最高値は80%。そして不二は82%」
「シンクロ率?」
首を傾げた彩音に、コムイが簡単に説明した。
シンクロ率が低いと適合者が危険になる。
装備型にしてはシンクロ率が高くて安定しているよという言葉に2人は少しホッとしていた。
ユキサ同様、2人のイノセンスは発動の挙動が不安定なため、ヘブラスカが調整をした。
数日はイノセンスを使う事が出来ないと言われた。
彩音は左手、不二は右手が動かしにくい。
それぞれの手首につけている、イノセンスであるブレスレットは自分たちのいた世界で購入したものだ。
「まさか、これがイノセンスなんてね」
不二の言葉に彩音も頷いた。
仕事に戻るコムイを見送った後、3人は自分たちの部屋に向かっていた。
既に準備されているという彩音と不二の部屋は、ユキサやアレンの部屋より1つ上の階層にある。
途中までアレンと共に行き、部屋まで送るというアレンをやんわり断り、彩音と不二は自分たちの部屋がある階層へ。
中央が吹き抜けになっている廊下を歩きながら、彩音は辺りを見回していた。
「凄い高いね~…!」
「落ちないようにね」
吹き抜けを覗き込む彩音に、クスリと笑って不二が言う。
歩みを進めていくと、不二の名前が書かれたネームプレートが見える部屋に到着する。
さすがに男女が隣同士、というのはよくないのか、彩音の名前は近くにはなかった。
「部屋まで送るよ」
「大丈夫だよ、同じ階層なんだから」
ニコリと微笑んだ彩音に不二は頷いた。
周助、と彩音がポツリと呼ぶ。
「よく分からない世界に来て混乱してるけど、でも周助が一緒で良かった。…頑張ろうね」
「うん」
少しだけ、瞳の奥に恐怖を秘めているであろう彩音の表情を見て、不二は頷きながらも改めて決心する。
―――――彩音は絶対、自分が守る。
突然飛ばされたこの異世界で、これからなにが起こるのか、自分たちに何が出来るのか。
分からない。分からないけれど、命がある限りこの世界で生きていかなければならない。
彩音の背を見送り、不二は部屋に入った。