第23章 第二十二話 アルマ・カルマ
「いつから幻覚症状があったんだ!」
ドンッ!と机を叩くサーリンズ。
ユウは何を見た?と続いた言葉に、エドガーが答えた。
「今の彼にとって『知らない人間』『知らない景色』最近は夢でも見るそうですよ」
「それは、進行してるってことでしょうか」
気が触れ正気を失うのも時間の問題だろう…昔のあの子たちのように。
「被検体『ユウ』の実験は中止し、凍結処分とするしかあるまい」
その話を、部屋の外でアルマが聞いていた。
「ダメか。また睡眠状態に戻っちまった」
良くないな、と職員たちがユウを見ながら言う。
意識が段々と不安定になってきている。
キィ…と扉が開く音がした。
アルマがユウを背負って走る。
起きていない仲間に謝罪をしながら、ひたすら走った。
ユウが処分されたらぼくは耐えられないと。
せっかく友だちになれたのにと。
その言葉を聞きながら、ユウはただ会話する回数が増えただけじゃねーかと朦朧とする意識の中で呟く。
とその時、式針が2人の体に刺さりその場に倒れた。
後ろから現れたのは鴉。
禁羽、という声と共に2人の周りに札が張り巡らされていく。
「お戻り頂きます、使徒さま」
ぐっとアルマが体を動かし、ユウを蹴り飛ばした。
落ちていく先は用水路。
「アル…ッ」
「上手く行けば外に出られるカモ?」
「かもってなんだよ!」
逃げて、とアルマが言った。
「バカだろおまえぇーーー!!!」