第13章 第十二話 東へ
そんなものたちを抱えていれば、しょっちゅう倒れる事など仕方のない事だ。
「あの、神田…」
「モヤシは無事だ。イノセンスを壊されたはずだが残っていて、今アジア支部で療養とリハビリ中だそうだ」
神田の言葉に一瞬驚いたが、そう…とだけ呟いた。
「お前は分かってたのか?」
「…。あの時、アレンのイノセンスだ、って分かった。アレンがノアに心臓を貫かれたのも、見えた」
それにあのノアは見覚えがあった。
―――――デイシャを殺した、ノア。
「それにしても、イノセンスがアレンを助けるなんて…」
イノセンスについてはまだまだ知らない事があるのだろう。
ユキサと彩音の体質についてもよく分かっていないのだから。
「明朝、船で日本へ渡る」
早く寝ろ、と言われ、ユキサが体を起こした。
何をしているのかと訝しげな視線を向けられたが、ユキサが神田の手を引っ張る。
「私は布団で寝るよ」
神田が床で寝るなど想像がつかないとユキサが小さく笑った。
そんなユキサを神田が睨みつける。
「寝ないつもりか」
え…とユキサが固まった。
じっ、と見つめられて居心地悪そうに視線を逸らす。
ユキサを連れ、日本から教団へ帰っていたあの時。
ユキサと同室で宿に泊まっていた事があった。
その頃に神田が気づいた。
ユキサは布団で眠った事がない。
というよりも、寝る気がない時は布団で体を休めているだけなのだ。
初めは慣れない布団で眠れないのかと思っていたが、たびたびベッドと布団どちらか選ぶ時、自ら布団に行く事が多かった。
その時は必ずと言っていいほど眠っていないようだった。
「その…ちょっと眠れないだけで」
動いたりすればベッドだと音がうるさいでしょ?と下手に笑う。
だが神田は黙ってユキサを見つめたままだった。