第11章 第十話 奇妙な館
「分かった。だけど絶対は無理はしない事。調子が悪い時は使わない。そう約束してくれるなら、再生の魔法を使ってもいいよ。もしやぶるようであれば、口を開けなくするからね」
「え…」
にっこりと笑ったティエドール。
後ろに何か見えたような気がして、ユキサは少し身震いをしながらはいと返事をした。
ふと、近づいてきた神田にユキサは首を傾げた。
「神田?」
「…俺にはAKUMAウイルスは効かない。だから俺にはかけなくていい」
ユキサを心配しての事だろう。
しかしユキサは首を横に振った。
「テメェ…」
「神田、その治癒能力は、代償があるよね?」
ぐっ、と言葉を詰まらせる。
代償があるのなら、極力使わせたくないとユキサははっきり言った。
そうして今に至るのである。
未だティエドールを狙ってくるAKUMAの数は多い。
本格的に伯爵も動き出した証拠だろう。
「おっ!あそこから見た風景も良さそうだねぇ!!」
「元帥!」
ティエドールが楽しそうに橋下へと走っていった。
5人もそれを追った。
ティエドールは先客だと言って足を止めていた。
そこに座って絵を描いていたのは1人の男性。
こちらに気づくと、こんにちはと笑顔で挨拶をした。
「なかなかいい絵だね」
「ありがとうございます」
通りかかった荷車に乗せてもらいながら、ティエドールが男の絵を見ていた。
横から彩音も覗いて、素敵!と歓喜の声を漏らす。
「ティエドール元帥の絵も好きだけど、あなたの絵も凄く好きです!」
「建物の絵が多いねぇ」
「僕、大学で建築の勉強をしてまして…」
「なるほど。こっちが本業というわけか…」
えーと、とティエドールが男を見ると、男がアルフォンス・クラウスだと自己紹介をした。
「私は、フロワ・ティエドールだ」
握手をしながら、ティエドールが次々に紹介をする。