第4章 曖昧な関係は終着へ
飲み会だというのに、こんなにも楽しくない空間があるんだろうか。
独歩は少し離れた場所で、飲み会に参加するのすら珍しいからか、女子社員に囲まれている。
珍しく独歩から離れた席に座り、あまり強くないお酒を少しずつ口に運びながら、ため息を吐く。
来るんじゃなかったかな。帰りたい。
「さん、あんま飲んでないじゃん」
「あぁ、あんまりお酒強くないので」
たまに少し言葉を交わすくらいの男性社員が、隣に座って話しかけてきたのを、余所行きの笑顔で応える。
「俺、実はずっとさんとちゃんと話してみたかったんだよね」
「え? そうだったんですか?」
爽やかな笑顔で言われ、意外な事に驚いてしまう。
彼は結構人気のある人だった気がする。そんな人が私を気にしていたとは思わなかったから。
「あの、さ。さんて、付き合ってる奴とか、いる?」
「え? あーははは……今は、特にいませんよ?」
「えっ!? マジでっ!? そっか……俺、もしかしたら、観音坂と付き合ってるのかとか、思ってたから」
やっぱりそう見えるのか。
独歩の事はよく聞かれるから、珍しい事ではないけど、聞かれる度に自らの首を絞める羽目になっているんだけど。
「付き合っては、ないですね……」
自分で言っていて辛くなる。
「あの、じゃぁ、その……今度、デートに誘っても、いい?」
モテるだろうに、わざわざ私にそんな事を言うなんて想像していなくて、呆気に取られる。
「」
突然声を掛けられ、そちらを向くとそこには独歩がいた。
笑顔が怖い。
「すまん、コイツ借りて行く」
「え、あ、あぁ……」
腕を掴まれ、立ち上がらされる。その力は割と強い。
「ちょ、独歩っ……」
無言で前を歩く独歩に引きずられるような勢いで、転けそうになりながら歩く。
そのまま店を出て、近くの路地に連れ込まれた。
壁に背をつける形で立たされ、そのまま独歩は手を私の顔の横の壁についた。
「ちょっと……突然、何……」
「アイツの事、好きなのか?」
「は? 何でそうなるのよ……」
突飛な質問に、意味が分からず間抜けな声が出る。
「楽しそうに話してたし、アイツモテるし、女子社員にも人気だしな……」