第19章 大切な記憶
「は?何が言いたいわけ?オマエさっきから喧嘩売ってんの?」
「別に売ってないよ、今の悟に喧嘩を売ったところで面白くも何ともないしね」
「じゃあ何なんだよ、うぜぇな」
そのいつもとは違う二人の口調に、まるで学生時代の時にしていた喧嘩を思い出す。それはそれは校舎を半壊させるほどの大きな喧嘩だった。
「二人とも…喧嘩しないで」
傑にしがみついていた身体をゆっくりと離す、そして背後にいるであろう悟へと振り返った。
その瞬間、私を見つめた悟の動きがピタリと止まり不機嫌そうな表情をしていたその顔がスッと色を無くす。
多分私のぐちゃぐちゃになった顔に驚いたのだと思う。
「ヒナ、泣いてたの?」
「…………」
「どうして、大丈夫?誰かに何かされた?」
心配してくれるのは嬉しいが、見当違いも良いところだ。だけれど、悟に言われた言葉に傷付いて泣いていたなど言えるはずがない。
だって悟からしたら、何一つ間違ったことなど言っていなかったんだから。