第33章 純黒の
くそっ、状況が分からない。
この停電の原因は何なのか。単なる事故だろうか。
1人で走って行ってしまった哀ちゃんは大丈夫だろうか。
観覧車に乗車中の女性と公安はどうなっているのか。
そんな事を考えている間も、人々はみんな水族館へと走っていく。とりあえずは、この停電の原因を調べなければ。
「あの、スタッフさん!この停電の原因って分かります?
復旧にはどれくらいかかるんでしょうか?」
「も、申し訳ありません、私達も把握し切れていなくて…」
「じゃあ、何で水族館だけ明かりが着いてるんでしょう」
「た、多分、他の施設と電源供給場所が違うからかと。
新しく出来た施設と以前からある施設では、供給ラインが異なるんです」
という事は、新しい電力供給ラインだけが何故だか事故で故障したか、若しくは何者かによって弄られたか。後者でないことを祈るばかりだな。
だが、もし本当にこの停電が人の手によって引き起こされたものならば、一体誰が、何の目的で行ったのだろう。
「とりあえず、スタッフの方々はお客さん達の誘導をおね……」
ガガガガズゥゥゥン!!!
轟音が響き渡った。
観覧車で何かが起こったらしい。
「え!?な、何!?」
すると、バラバラバラとプロペラのような音が空から聞こえてきた。音から察するに、相当大きなヘリコプターが飛んでいるのだろう。
だが、全てが闇に包まれている現状ではその姿を視認できない。
ドドドドドッ!!!!
突然、空から観覧車に向けてガトリング砲が撃たれだした。
観覧車の側面を満遍なく攻撃していっている。
暗闇の中で銃声が鳴り響くという状況に、人々は更なるパニックに陥っていた。
「何!?何が起こってるの…!」
今一体何が起こっているのか、この場にいる誰にも理解が出来なかった。
哀ちゃんが心配だ。
観覧車へ乗車したのかどうかは分からないが、少なくともその近くにいることは確かのはず。そうなれば、あのガトリングの被害を受けてしまうかもしれない。
それに、女性も公安もまだゴンドラの中だ。
すぐにでも助け出すべきだろう。
だが、今の私に何が出来る?
あのヘリを止めることなんて到底無理だし、そもそもこの状態では観覧車に近づけるかどうかさえ怪しい。
私には、今尚ガトリングで攻撃され続ける観覧車を傍観することしか出来ない。