第33章 純黒の
あれから約1週間、
事件事故件数も程々に、いつもと何ら変わらない日々を過ごしていた。
……そう、昨日までは。
『昨夜、首都高速道路11号線を走行中の車が高架下の倉庫で炎上する事故がありました。この事故による死傷者は奇跡的にありませんでしたが、車の運転手は現場から立ち去った模様で……』
登庁後、私は自分の携帯でニュースを見ていた。
「あ、それ昨日のっすよね。確か、結構規模の大きい交通事故があったんでしたっけ」
「ええ、乗用車とトラック何台かが大破するほどだったらしいわ。
それだけの大事故なのに、マスコミは愚か私達にまで詳しい情報が伝えられていないの。
おかしいと思わない?」
「そうですね。
あ、それとさん知ってます?昨日警察庁に侵入者があったらしいって噂になってるの」
「は?察庁に?」
「はい。でも実は、それも噂の範疇を出ないんです。
警視庁には何も情報が降りてきてないらしくて」
「……何か変よね。明らかに」
「確実に情報が遮断されてますね」
「はぁ、どっかのお偉いさんからの圧でもかかってるのかしら」
少なからず、何か大きな力が働いていることは確実だろう。
昨日起こった全てのことを、まるでもみ消すかの如く。
『……続いてはこちらっ!今話題沸騰中!あの東都水族館が更にパワーアップして帰ってきました!!
全面リニューアルのため昨年から休業していましたが、本日から待望のオープンという事でその最新情報をお届けします!!』
私達がどれだけ頭を悩ませようと、画面の先のキャスターはお構い無しに陽気な声を響かせる。
少しも興味のない私は、そんな声など聞こえないも同然であるが。
ブーブー
突然、ニュースを流していた私の携帯が鳴った。
「はい」
『佐藤です。お忙しいところすみません』
「全然大丈夫よ。何か用?」
『実は、さんに調べて欲しい女性がいて』
「調べて欲しい女性?」
『蘭さん伝にコナンくんから通報があったんです。
何でもその人、記憶喪失だそうで。コナンくんからの話によると交通事故にあった可能性が高いみたいです』
「交通事故って、まさか昨日の?」
『恐らくは。あの事故の運転手もまだ見つかってませんし』