第29章 桜と追憶
すると、阿笠さんが連れてきた警官が現場にやってきた。
「な、何だ君達は!遺体から離れなさい!」
「失礼、私は警視庁のと申します。
彼女はFBIの捜査官で、この子は私の連れ」
そう言いながら警察手帳を出す。
「そ、それは失礼致しました!」と敬礼を返す警官。
「直ちにこの神社の出入り口を封鎖。刑事を呼んで下さい」
「は、はい!」
そうして警官はすぐさま走っていった。
「ねぇ、じゃあまさか犯人はその黒兵衛ってこと?」
「いや、この人懐に入れてた小銭入れに黒い五円玉がびっしり入ってる。
多分、このおばさんが黒兵衛本人だ」
「「えぇっ!?」」
ジョディに対するコナンくんの答えに驚く私達。
コナンくんは被害者の懐に入っていた輪ゴムで留められた札の束を取り出した。見てみると、そこにはGPS発信機が包まれている。
こんな物がスリの財布に入っていたということは……
「黒兵衛に財布を掏られた被害者が、殺人犯ということかしら?」
「うん、恐らくね」
そしてその後、通報により捜査一課の面々が現着した。
「さん、お疲れ様です」
「あら高木くん、お疲れ様」
「まさか、現場に居合わせた警察官がさんだったなんて驚きました。最近よくお会いしますよね」
「私も好きでこんな殺人現場に居合わせてる訳じゃないんだけどね。
何だか、色んな面倒臭い案件に巻き込まれる体質なのかも。本当勘弁して欲しい」
「正直、同感です」
お互いにあはは、と乾いた笑みを零す。
「それで状況なんだけど、この現場は神社の出入口から遠くて、遺体は殺害されてからまだそんなに時間が経ってなかったわ。
神社の出入口を封鎖したから、犯人を封じ込められたはず」
「はい、適切な指示で助かりました」
「しかし、本当かねくん?
この撲殺された女性が、捜査三課が長年追っていたスリの黒兵衛だというのは」
「はい、目暮警部。
私自身信じ難いことだとは思ったんですが、コナンくんの話を聞く限りはそうかと」
「間違い無いと思うよ。そのおばさんが持ってた小銭入れの中に、マジックで黒く塗られた五円玉がびっしり入ってたから」
こんな独特な五円玉を大量に所持しているのなんて、スリの黒兵衛くらいだろう。