第8章 響かせろ、もっと遠くまで
「やっぱり変わった模様やね。鈴音ちゃんによぉ合ってる」
「そうでしょうか?」
そう言いながら私は左手に持っていた方の日輪刀の鞘も抜き、右手に持っていたそれと同じように色を変えた。
「えらい軽いやろ?」
「はい。左右に持っていても殆ど負担を感じません」
「わしが薄ぅく強ぉく打ったからね。こんなのわししかできんよ?すごいやろ」
「…はい!凄いです!鉄珍様…本当に凄いです!!!」
クナイを両手に持つ感覚とそう変わらないその感覚に、感動すら覚えた。
「強く打っているって言っても、元の日輪刀に比べるとかなり薄いからね。折られないように2本をうまく使って攻撃受け止めてね。すぐ折ったら、わたし泣くで」
「もちろん!そんなことがないよう十分すぎるほど注意します」
両手で日輪刀を持ちその感覚をよく確かめる。そうしていると、どうしても実際に使ってみたくなるのは自然な流れというものだ。
「鉄珍様」
「なに鈴音ちゃん」
「中庭をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ええよ」
鉄珍様の返事を聞いた私は、正座のままくるりと180度身を回転させ炎柱様の座っている方へと視線を向ける。
「炎柱様」
「なんだ」
「お相手していただけないでしょうか?」
「うむ。いいだろう」
そう言いながら丁寧な所作で立ち上がる炎柱様に倣い、私も立ち上がる。
「鉄珍様。なんでもいいので刀をかしてもらえないでしょうか?」
「ええよ。準備させておくからはよ行きや。わしも鈴音ちゃんが日輪刀使うの見たいんよ」
「ありがとうございます!では荒山!行くとしよう」
「はい」
そうして私と炎柱様は一旦屋敷の玄関まで戻り草履を履き、先ほど日輪刀を受け取った部屋から見える中庭へと移動した。