第20章 月嗤歌 ED Side A - II【別邸組 *♟】
「ひぁっ……!」
きゅうぅっと乳首を摘まれ、強張っていた身体の力が抜け落ちる。
その一瞬のうちに伸びてきたユーハンの指が彼女の指を絡め取り、愛おしそうに包み込む。
「そんなに怖いならば、こうしてしまいましょうか」
腕のなかへと閉じ込めたまま、その耳をかすめた声。
「………?」
知らず彼を見上げた刹那。次の瞬間、怯えた声が零れ落ちる。
「っ……や、なんでまた………っ」
その目元を覆ったのは件のスカーフ。
視えぬ視界を恐れるヴァリスに、ぐっと桃の香が近づいてユーハンが囁く。
「大丈夫ですよ、主様。人間は視覚から得られる情報が一番多いのです、
………だからそれを遮断したならば、それ以外の感覚が研ぎ澄まされるのですよ」
囁かれただけなのに、みずからの唇から「ひぁっっ」と狼狽えたような艶音が零れ落ちる。
とん、と肩を押され、寝台の上へと倒れ込む。
彼女の後ろ背に座していたハナマルがさっと身を翻し避ける彼をよそに、桃の香が遠ざかっていく。
「あっ……!」
指先がそっとヴァリスの秘められた花弁に沿えられ、その花口に熱くぬめるものが這わされた。
「あ、……あぁ、駄目………っ!
ユーハン、………そんな、ところ……!」
視界が遮られていても、臀部に吹きかかる吐息とその感触ですぐにわかった。
彼の舌だ。
シーツをずり上がって逃れようとする彼女の脚を抱え込むように押さえ付けて、滴るその蜜を吸い取った。
「ああぁっ……駄目、………駄目ぇ……!」
より糖度を増したその艶音に突き動かされるように、今度は別の香がした。