(名探偵コナン】生まれ変わったら名探偵の姉でした(改)
第26章 小さくなった名探偵
新一「と、とりあえず俺が博士と工藤新一の遠い親戚って事にして、両親が忙しいから博士の家に預けられてる設定にするつもりだった……。名乗るのも当然偽名で……例えば江戸川コナンとか。そんで強引だけど世話焼きな蘭なら、小さい子供に懐かれて甘えられたら引き取りを断られねぇなと……」
そう言った新一の視線がチラリと動き、コナン・ドイルや江戸川乱歩の本が数々並んだ本棚の一列を見つめる。そんな弟のバツの悪そうな態度から罪悪感は当然あって、それでも運良く掴んだ命と元の身体と自由を戻す為に、勇んで自分一人で戦おうとしているわけだ
椎奈「……あのね新一、子供を預かるって事は自分の子供を愛して育てるよりも大変なの。命を育む責任や経済的な問題、環境の配慮や思いやりを込めた接し方も考えないといけない。ましてや両親と保護者から離れ、他人に懐いて同居を求める子供がいたら、普通はまず育児放棄を疑う大人が多いものよ。別の問題が知らないところで増えるかもしれない」
新一「じゃ、じゃあどうすりゃ良いんだよ……っ?!俺は好きでこんな体になったんじゃねぇ、奴らの毒のせいで突然こんな状況にされられたんだ!自分でどうにかしねぇと、探偵としても気持ち的にも我慢ならねぇんだ!俺は17歳の工藤新一なのに、なのになんで……っ」
阿笠「新一くん……」
私の冷静な言葉で全てにダメ出しをされ、とうとう新一が悲痛な叫びと悔し涙を溢れさす。自分一人では儘ならない事件に遭い、俄かに信じられない現象と見通しの立たない今後、抑えられない感情と現実に苛まれる恐れ……。新一はそれらを突きつけられて、初めて弱音を吐いたのだ。原作でだってここまで表にしなかった、否、出来なかったんだ。だからせめてこの世界では、私や家族や新一を知る者達にぶつけてほしい……
私は膝立ちで泣き崩れている新一の肩に手を置いて、小1の頃と同じ高さの頭を優しく撫でる
椎奈「……今日から一先ず、博士のお家に泊まりなさい。私から父さん達に連絡するわ。それにきっと大丈夫、私と父さん達が貴方を守れるように何とか計らってみせるから」
私がそう誓って両腕に新一を抱き締めると、新一も私の服を掴んで博士に背中を撫でられながら静かに泣き続けるのだった