第8章 姫がいなくなった(秀吉さん)
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また数日が過ぎて、今日は良く晴れた温かい日だ。
昼食後、秀吉さんが時間があるからと庭に降りてくれた。
木々の上で鳥たちが鳴いている。
秀吉「お前が住む世界はあっちなんだぞ?」
秀吉さんは時々こうして優しく促してくる。
「チャチャ!(私の住む世界はこっちです!)」
秀吉「嫌なのか?」
「チャチャチャ(当たり前です)」
肩に掴まっている足に力をこめると秀吉さんは感慨深げにしている。
「チャ?(なに?)」
秀吉「本当にお前は舞みたいだな」
ドキッとした。
秀吉「あいつも俺と一緒に生きたいって、この時代に残ってくれていたんだ。
元の時代にはあいつを大事に思ってくれる家族や居場所があったはずなのに。
だから何があっても大事にしやろうと思っていた。だけど……」
「チャ?(秀吉さん?)」
秀吉さんがハァとため息をついた。
秀吉「もしかしたら俺に言い出せなかっただけで、元の時代に戻りたいって思っていたのかもしれないって最近思うんだ」
「チャ?チャチャ!(え?そんなことないよ!)」
懐かしんだり、寂しい時は時々あるけど、私は秀吉さんと一緒に居られて幸せだって思っていた。
「チャ……」
そんなふうに考えないで欲しい。
秀吉「最後にあった日、舞が『もっと一緒に居たい』って言ってくれたんだ。
あんなに可愛くねだってくれたのに…なんで俺は断ったんだろうな。
そのくらいのこと叶えてやれないで、何が『大事にする』だよな。きっとあいつは俺に愛想を尽かして先の世に帰ったんだ…」
秀吉さんは両手で顔を覆った。