第39章 桜餅か桜酒か(信玄様&謙信様)
佐助「舞さんのところに行ってきます」
幸村「まだいいんじゃねぇか?
1人でのんびり花を見たい時だってあるだろう」
兼続「しかしあの辺は警備が薄い。急襲されればこちらが出遅れるぞ。
あの娘は何度言えば警戒心を持つんだ…」
口では呆れているが、怜悧(れいり)な横顔には同情の色が浮かんでいる。
それもこれもここ最近の舞を狙った誘拐事件が頻発したため春日山城に軟禁状態だったからだ。
しかも城内であっても湯浴みや厠に行く際は大勢の護衛がつけられるという、いわゆる厳戒態勢だ。
息が詰まっているだろうと容易に想像できるだけに、兼続は舞が花見を続けられるように警備体制の変更を指示した。
幸村「今、人をやったんだろ?
だったらもう少し良いんじゃんねぇのか」
ひと時の自由を楽しんでいるなら放っておいてやれと、幸村は2個目の桜餅を食べている。
佐助「そうだけど、このままだと謙信様が暴れ出しそうだから行ってくる。
大丈夫、むりやり連れ戻したりしない」
タタっと軽やかに走っていく佐助は舞の唯一の現代人仲間だ。
ここに居る誰よりも彼女の心に寄り添えるだろうと、一同静かに見送ったのだった。