第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
「あ!負けたっ!」
秀吉「ははっ、遅出しして負けるやつがいるか」
「だって慣れないからタイミングがズレるんだよ…」
慣れていないというのは嘘で、秀吉さんの手が頻繁に触れるからドキドキしっぱなしで集中できないのが原因だ。
秀吉さんが仕方ないなと笑いながら指の背を使って耳たぶをくすぐってきた。
もちろん秀吉さんだから脇腹を狙ってこないし、髪が乱れるからと首筋も触ってこない。何度勝っても手の甲で頬をくすぐるか耳にちょっと触れるだけだ。
(こういう優しいところ好き…)
秀吉「耳がそんなにくすぐったいのか?」
「うん…へへ」
(秀吉さんの優しいトコがくすぐったいんだよって言えたらいいのにな)
懐に忍ばせている温石がやけにポカポカして、かなり冷え込んでいるのに寒くない。
「さ、もう1回。次は勝つからね」
秀吉「お、いいぞ」
歌いながら手を握って、手を合わせて、好きな人に堂々と触れられる手遊びに夢中になっていた。
「「どっちを投げた?」」
「あっ、やった!」
秀吉「初めて負けちまったな」
「やった~。じゃあ秀吉さん、少しかがんでよ」
こうか?と警戒もなく屈んでくれた人にそろそろと手を伸ばす。
やっと届いた髪の感触は、残念ながら指先が冷えてよくわからなかったけど、よしよしと撫でたら秀吉さんが盛大に照れだした。
秀吉「なっ、なんで撫でるんだよ」
「だって、秀吉さんは頭をなでるとくすぐったそうな顔するから。
どう?くすぐったかった?」
秀吉「…ああ、そうだな」
「ふふ」
秀吉さんの頬が赤くなっているのはこの肌を刺す冷気のせいだけじゃない。
照れてる秀吉さんもいいなと見ていたら後ろから唐突に声がかかった。