第37章 姫の年越しシリーズ(2025年)・1月1日
「青葉城に遊びに行くってだけで秀吉さんが大騒ぎしそうなのに1年も無理じゃない?」
政宗がどんな顔をしているのかなんとなく見るのが怖かった。
政宗の絵馬を眺め、どうせ『1年くらいいいだろ』っていう軽い返事がくるのを待った。でも……
政宗「1年じゃねえよ。ずっとって意味だ」
(………ずっと?てどういう意味?)
「な、なに言ってるの?ずっとなんて無理でしょ…」
ギュッと雪を踏む音がして距離を詰められた。
政宗「舞がその気になれば無理じゃない。料理を教えてやるから出来たら俺に振る舞えよ」
「その気って……」
いつも冗談ばっかりの人に真剣に迫られ、私は怯みきって後ずさって……また足を滑らせた。
ズル
「わあっ!?」
政宗「っと、ここまで雪慣れしていないのも新鮮だな」
政宗はハハっと笑って片腕1本で軽やかに支え、身体をぐっと密着させてきた。
触れそうになった鼻先を避けたら顎を捉えられて、眼前に迫るイイ男に心臓がドッカンと破裂しそう。
政宗「何度も言っているが俺は舞が欲しい。
城に連れてって四季の眺めを見たいなんてな、冗談にされちゃ困る」
「ちょっ、近いよ!欲しいって言われても、私は物じゃないのであげられません。
身体が欲しいの?私が物珍しいから?それとも掃除が得意だから女中として欲しいの?
政宗の気持ちをもっと言葉にしてくれなきゃ、やだ。行かない」
この時代にきてから男性が女性に対して『欲しい』って言っているところを何度か見聞きしたけど、感覚がズレているのか『欲しい』じゃ、私の心は動かない。
好きとか、可愛いとかストレートに表現してくれないと絶対嫌だ。
『行かない』ときっぱり言い切ったら政宗は悪いと苦笑した。
政宗「物珍しいのは間違いないが舞と居ると面白い。
料理に集中できないくらい楽しいやつなんてそう居ないだろ。
掃除が得意な女中はわんさかいるから増やす気はないし、舞が気に言ってるから連れてくんだ」
「じゃあ政宗を楽しませることが出来なくなったら私は安土に返されるの?」